フランスの教会
読書感想文対象学年

「アーニャはきっと来る」は、中学生の読書感想文にとてもおすすめです(2021年課題図書)。

ここでは、読書感想文のテーマのアイデアと

書き方の流れの例をまとめています。

あなたの参考になれば幸いです。

【アーニャはきっと来る】ひとことあらすじ

あらすじを一言で言うと?

世界大戦末期、スペインとの国境に近いフランスのレスキュンという村の人達が協力してユダヤ人の子どもたちの国境越えを手伝うお話。

戦争の理不尽さ、兵隊も実は普通の心を持った人であることを感じられる素晴らしい作品です。読んでいて、誰のための戦争なのかを考えてしまいます。戦争は、たくさんの人を不幸にしてしまうことに思いを馳せ、読書感想文で語りましょう!

映画化もされているので、映像でも物語を知ることができますよ。

著者について

『アーニャはきっと来る』の作者は、マイケル・モーパーゴというイギリスの児童文学作家です。『最後のオオカミ』『フラミンゴ・ボーイ』と、読書感想文の課題図書として取り上げられ続けています。僕としては、今回の作品が一番印象的でしたが、ほかの作品も読んでみて、筆者の伝えたいことをより深く考えてみてください。

【アーニャはきっと来る】主な登場人物・場所

ここでは「アーニャはきっと来る」に登場した主な人物や場所について、簡単に解説します。

ジョー(主人公)

ピレネー山脈のふもとの村に住む羊飼いの少年。正直者で誠実な男の子。嘘はつけないし、守らなければならない秘密はたくさんあるし、大変です。でも、いい子です。父は捕虜として、ドイツ軍に捉えられています。

アンリ(ジョーの祖父)

ジョーの父親は兵士として出征し、捕虜としてとらえられていて不在のため、実質的に父親のような役割も果たしている。第一次世界大戦ではドイツの軍人と戦火を交えたこともある。

オルカーダ(変わり者のふりをしているおばあさん)

村から少し離れた豚農場に暮らすお年寄りのおばあさん。義理の息子のベンジャミンはユダヤ人。迫害を逃れたユダヤ人の子どもたちをかくまっている。ジョーの祖父のアンリとは若いころ恋仲だったことがある。

伍長

ジョーの住む村レスキュンに駐在しにきたドイツ軍兵士。村人とは心を開いたつながりができる。駐留中にベルリンにいる娘を亡くす。

読書感想文としては、誰の立場に寄り添っても、とっても良い作品にできると思います。

物語の舞台となった場所

フランスとスペインを分けているピレネー山脈のフランス側、レスキュンという村が舞台です。

グーグルマップで「ピレネー国立公園」を検索してみました。

キレイな山岳地帯だということがわかります。

景色を見て、読書感想文のイメージを膨らませましょう。

【アーニャはきっと来る】感想文のアイデア・テーマ

さあ、イメージができてきたところで読書感想文のアイデアを考えてみましょう。僕が思い浮かんだのはこんなテーマです。

感想文アイデア

・第二次世界大戦のころのヨーロッパの力関係と物語の舞台レスキュンの様子について語り、田舎にも戦争の影響が及ぶ様子を考える。
・兵士として出征することについて、捕虜としての生活について考え、ジョーの父親の心情に寄り添う。
・ユダヤ人とアウシュビッツなどで行われたホロコーストについてさらに調べ、ベンジャミンたちの行動について考える。
・ドイツ軍の兵士とレスキュンの市民とのかかわりについて読み解き、交流することと打ち解けることの意味について考える。
・駐留していたドイツ軍の伍長とジョーとの関係について物語から取り出し、ジョーの立場について語る。

あなたも読書して印象的だったことや考えたことがあると思います。考えたことを読書感想文のタネとして、広げていきましょう。

【アーニャはきっと来る】読書感想文の流れの例

では、ここからは「僕ならこんな流れで書くかな…」という読書感想文の流れの例をまとめていきます。流れを参考にしつつ、あなた自身の考えを織り込めば、あなたオリジナルの読書感想文になるはずです。

第二次世界大戦の頃のヨーロッパの情勢と、ホロコーストについて調べたことをまとめる。

まずは、この物語の重要な要素であるナチスドイツによるユダヤ人の迫害について調べ、迫害の酷さに驚きましょう。ユダヤ人を根絶やしにしようとしたナチスドイツの「狂気」と、実際に何百万人ものユダヤ人が虐殺された事実についてまとめましょう。例えばこんな感じで…。

第二次世界大戦。世界中が舞台となった悲劇的な戦争だ。でも、僕はあまり詳しく知らなかった。特にヨーロッパで行われた戦争の中身を詳しく知らなかったので、少し調べてみて改めて驚いた。ホロコーストで虐殺されたユダヤ人は600万人にも上るということだった。ナチスドイツによって捉えられたユダヤ人たちは、ほぼ全員が収容所から出られなかったということだ。歴史的な事実とは言え、あまりにも非人道的な話だとぼくは思う。

と、読書することで調べたことがあるということをまとめましょう。

このサイトに、ホロコーストについて簡潔にまとめてありました。

http://www.urban.ne.jp/home/hecjpn/what.html

フランスの田舎町レスキュンの様子と、ドイツ軍の進駐・ユダヤ人の逃亡についてまとめる。

次に、戦争の舞台となったフランスの中でも、激しい戦闘が行われたわけではない田舎の村レスキュンについて語りましょう。日本でも太平洋戦争の時たくさんの都市が爆撃を受けて大きな被害がありましたが、田舎は人や爆撃目標が少ないため、直接の被害は大きくはありませんでした。レスキュンは田舎です。そんな田舎にもドイツ軍が進駐し、国境の警備にあたることになります。占領する側、される側の心情を考えましょう。例えば…。

ドイツに占領されたフランスにユダヤ人がとどまることは非常に危険だった。そのためにスペインに逃げることを考えるユダヤ人は多数いたに違いない。この物語の舞台レスキュンはスペインとの国境に近く、世闇に紛れて国境を超える人たちがいた。いわゆる戦争難民だが、占領するドイツは亡命を阻止する必要があるため、田舎の村にまで軍を進駐させた。平和な片田舎にも、戦争は影響を与える。

戦争でイメージするのは都市が破壊される場面が多いかと思います。実際の報道でもビルが爆破されるシーンがたくさん見られますよね。でも、戦争の影響は田舎にもおよび、軍隊は派遣されるのだということをまとめましょう。

ジョーとオルカーダばあさんとのかかわりを考える。

さあ、いよいよ物語の内容に触れていきましょう。ジョーが住む国境近くの村レスキュンは隣国スペインに亡命するユダヤ人が身を隠すのに適した場所です。だからこそ、ジョーはユダヤ人をかくまうことに深くかかわってしまうのですね。こんな風に書いてみてはどうでしょう…。

ジョーの住むレスキュンという村。その村はフランスの辺境にある小さな村に過ぎなかった。しかし、スペインとの国境に近いという理由で、ユダヤ人の亡命を阻止するためにドイツ軍が駐留することになった。戦争は都市だけではなく国土全体に広がっていくことがよくわかる。

ジョーはレスキュンにたどり着いたユダヤ人が身を潜めているオルカーダばあさんの家に、食料を届ける仕事をすることになった。ユダヤ人を手助することは銃殺されるかもしれない危険な行為だが、彼は秘密を守り通した。また、オルカーダおばさんも、変人のふりをして、人とのかかわりを最小限にとどめ続けた。ユダヤ人の命を守るために、ジョーもオルカーダさんも、誠実に生きていた。

田舎にも戦争の影響は確実に広がっていくこと。だからこそ、作らなくてもよい秘密の活動ができ、少年すらも関与してしまうということをまとめましょう。

ジョーと伍長との関係を考える。

今度は、ドイツ軍の立場についても考えてみましょう。占領軍ではありますが、兵士として派遣されてくる人たちは、徴用される前には一般人として生活していました。見た目は単なる敵ですが、ドイツ兵も国の意向に従っているだけかもしれないと考えると「深い」感想文になっていくでしょう。例えば…。

読書して僕が改めて感じたのは、進駐しているドイツ軍の兵士も、実は普通の人間だということだ。レスキュンの村人にとっては敵でしかないけれど、ドイツ軍兵士も国に戻れば農家を営む人もいた。また、祖国には家族がいて、同じように危険にさらされていた。このことに思い至った時、僕は改めて戦争の理不尽さを感じた。

一般の兵士は、兵隊として国の意向に従わなければならないが、遂行している作戦は、その兵士が望んでいることと同じではないかもしれないということだ。ユダヤ人をとらえること、亡命を許さないことを、実際には兵士は望んでいない可能性だって、十分ある。 

ドイツ軍伍長はベルリンに住む娘を失った。また、レスキュンの村人たちが実行したユダヤ人亡命作戦を、最後の最後で気づかなかったことにしてくれた。それは、きっと、ドイツ軍兵士の立場より、人間としての自分の考えを優先した結果だとぼくは感じた。兵隊としてはもしかすると失格かもしれないけれど、人としては正しかった。ただ、ものすごく悩ましい問題だ。

国家の戦略と個人の意向が一致しないことって、きっとたくさんありますよね。その時にどうするかで、それぞれの人の個性というか人間性が出てきます。ジョーも、オルカーダも、伍長も、きっとみんないい人なんですよね。

今度は、自分自身に引き付けて語っていきましょう。自分なら…と考えを巡らせることは、読書感想文として大切な要素です。あなたがその立場だったらどうするか、自分事として考えましょう。ここで、自分の経験を織り込むと、読者をより引き付ける中身になりますよ。例えば…。

 国(政府)の意向と、国民の意識のずれという意味で、僕が思い浮かぶのは東京オリンピックだ。新型コロナウィルスの影響で、1年延期されたものの、パンデミック(観戦爆発)が収まらない中で開催される。僕はまだワクチン接種を終えていないし、一日中マスクを着けて行動している。日本で開催される世界の祭典なのに、お祭りムードは全くなかった。

オリンピック出場を目標に大変な努力をしてきた選手たちにとっては中止になることはものすごく残念なことだし、開催された方がよかったのかもしれないけれど、開催されることによって新型コロナウィルスがまん延していくのは問題だ。

 僕は、感染を広げないために、政府の言う通り不要不急の外出は避けている。でも、やりたい部活の活動時間の制限にうんざりしている。個人練習もそろそろ限界で、友達の一部はこっそりグループで活動している。何が正しい行動なのかは一概には言えないけれど、その行動が、それぞれの人の人間性を表していることは間違いない。

 コロナウィルスとの戦いは、戦争とは少し違うかもしれないけれど、非常事態という意味で、僕は近いものを感じている。

政府の意向と国民感情がずれてしまった東京オリンピックを例にしてみました。新型コロナウィルスの影響は、きっとあなたにも身近な問題だったでしょう。非常事態宣言で休校となり、困ったことや、ワクチン接種について考えたり悩んだりしたことを書いても面白いかもしれませんね。

物語の中身から、背景にある世界の情勢を改めて考える。

そろそろまとめに入りましょう。この物語の中でとらえられたユダヤ人は2人だけですが、実際には何百万人ものユダヤ人がホロコーストにあっています。物語を読んだことで当時の様子を知ることができたことをまとめましょう。例えば…

レスキュンの村で隠れていた12人の子どもたちのうち11人はスペインに逃げることができた。しかしドイツ軍に捕らえられた子もいて、この物語は完全なハッピーエンドとはならなかった。ただ、僕は改めて、救われた命がある一方で、救われなかった何百万もの命があることを忘れてはならない。

第二次世界大戦は、僕にとって遠い過去の出来事だけれど、どんなことが起きていたのか、この物語を読んで少しは知ることができた。ホロコーストのような出来事が、二度と起こらないようにしていきたいと、ぼくは思う。

最後、二度と戦争は起こさないようにしたいという決意で締めくくりましょう。

最後に

僕はこの本を読んで、改めて読書って良いものだなと感じました。物語に感動するだけではなく、自分の考えの幅も少し広がるからです。

 読書感想文の課題図書には、戦争をテーマとしたものが毎年選ばれています。是非、ほかの作品にも触れてみてください。あなたの世界観が広がりますよ。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

納得のいくよい読書感想文に仕上がることを願ってます。

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