
児童虐待・戦争など、
重いテーマが扱われていますが、
主人公の成長に思わず涙してしまう
素晴らしい作品でした!
どうせ読むなら
感動する本で読書感想文を書きたい!
と思っている人にお勧めです!
「わたしがいどんだ戦い 1939年」ってどんな話?
「わたしがいどんだ戦い 1939年」は、2018年の高校生の読書感想文課題図書です。
アメリカの作家キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリーさんが2016年に発表した作品で、
テーマは戦争・児童虐待・少女の成長です。
キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリーさんはどんな人?
キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー(Kimberly Brubaker Bradley)さんは、1967年、アメリカのインディアナ州出身の作家さんです。
大学では化学を専攻したそうですが、子供のころから読書や書くのが好きだったので、卒業後は編集者として仕事をしながら夜間や週末に小説を執筆していたということです。
この「わたしのいどんだ戦い 1939年」でアメリカの子供向け文学を対象にしたニューベリー賞で次点、さらに、障害を扱った児童文学を対象にしたシュナイダー・ファミリーブック賞を受賞しました。
今までに17冊の本が出版されていて、たくさんの賞を受賞しています。
アメリカの田舎の農場で暮らしていて、馬を飼っているので、牧場での経験がこの物語にも役立っています。
主な登場人物
エイダ(エイダ スミス)
この物語の主人公の10歳の少女。最初はロンドンの場末のアパートに住んでいました。
先天性内反足(足が内側にねじれている状態)が原因で母親には虐待され、部屋から出たことはありませんでした。
ジェイミー(ジェイミー スミス)
エイダの弟。6歳。飛行機好きのわんぱくな男の子。
エイダの心の支え的存在です。
スーザン(スーザン スミス)
エイダとジェイミーの里親。
オックスフォード大学出身のかしこい女性ですが、
同居人だったベッキーが亡くなってから心をふさいて3年間を過ごしていました。
母さん
夫を造船所の事故で亡くしたエイダとジェイミーの母親。
生活するのに手いっぱいで、子ども2人を足手まといと思っています。
エイダを「奇形」と思っているので、家から一歩も出させませんでした。
(この母さん、やっていることはひどいのですが、必死で生きている様子も感じられ、
一概に、ただの「悪人」とは思わない方が良いと思います・・・)
バター(ポニー)
スーザンの家に飼われている小型馬のポニー。
ほぼ放置されていましたが、エイダが世話をして
エイダを乗せて走ったり跳んだりできるようになります。
フレッドさん
エイダに馬の世話の仕方などを教えてくれる
エイダの友達のマーガレットの家の使用人。
「わたしがいどんだ戦い」主なあらすじと要点
1939年からのイギリスでの物語。
実の母親から虐待を受けていた娘・エイダは、母親から逃れて疎開することに成功します。
疎開先でスーザンに人として大切に育てられ、虐待の傷が癒えたエイダ。
やがて実の母親と決別して、スーザンと本当の家族になるのでした。
虐待されて育ったことで、自分に価値がないと思っていたエイダの心が
スーザンのおかげで次第にほぐれていく場面は感動です。
心の傷は、完全に癒えることはないのかもしれませんが
暖かい人と過ごし、自分を正当に評価してもらえる環境にあれば
強く生きていけるんだと思えました。
それと第2次世界大戦の頃、イギリスの一般の方々がどんな生活をしていたかなんて、学校で習う機会も少ないので、歴史の勉強にもなると思います。
読書感想文のヒント
・母さんとスーザンを比べ、さらに自分のこと、日本のことを考えてみましょう。
母さんとスーザンは
子育てに対するスタンスがはっきりと異なります。
母さんは、日々の生活に手いっぱいです。
だから、「奇形」の子どもを育てるのは、ただお金のかかることで、やりたくないことなので、
いらいらしながら、時に暴力を使って育てます。
スーザンは友を失い、失意の中で生きているものの、遺産があります。
だから、子どもに必要なものを与えるなど、人として尊重して育てます。
どちらが望ましいかは明らかですが、
エイダの母さんのような子育てをしている親は
日本にもたくさんいることを考えていくと
読書した内容から「今」につながっていきます!
・虐待された子が、心を取り戻すまでの過程に注目しましょう。
エイダは児童虐待を受けていた子です。
物語の中で、エイダは強い意志を持って「戦う」ことで母の元を脱出しました。
現実で虐待されている子どもの多くは、心を閉ざし、逃げ出せる可能性を信じず、
閉じ込められたままで過ごしてしまいますが、
エイダは脱出に成功しました。
でも、引きとられた先でのエイダの言動は、虐待をうけた子供らしく、
自己肯定感も低く、素直でもなく、
良いことをされた時にもパニックが襲います。
防空壕でも、
閉じ込められた時の記憶がフラッシュバックしてしまい、
叫んだり震えたりと、パニックを起こしたり、心を閉ざしたりしてしまいます。
読んでいてあまりのリアルさに驚きましたが、
作者自身も虐待の経験者
ということで、少し納得しました。
心の傷(トラウマ)をいやすためには、とても時間がかかること、
そして理解者が必要だということをまとめる
と、説得力のある感想文になりそうですね。
・日本とイギリスの戦争時の状況を比べてみる。
学童疎開、鉄製品の徴収、配給、女性の活躍、広い土地を畑に転用など
戦時体制って日本だけのものかと思っていたら、
イギリスでも似たような事をしている
ことが、この本を読むとわかります。
戦争がもたらす状況や悲劇について、
そしてその混乱を利用して疎開することができたエイダの機知について語る
と、良い感想文になりそうですね。
ちなみに原題はThe war that saved my life(私の人生を救った戦争)ですが、
エイダにとっては戦争の混乱が自分の人生を変えるきっかけになっていますね!
こんな流れで読書感想文を書いてみてはどうでしょう
身近な事→お話の内容・感じたこと→自分の成長
と言う流れで読書感想文を作りましょう!
①今の日本で起こっている「児童虐待」の事件を取り上げましょう。
「子どもの貧困」「児童虐待」に関するニュースは日本でもよく取り上げられています。
食事を制限されていたり、暴力を受けていたり。
最近のニュースを調べ、
虐待が起きた背景について考えましょう。
そして、あなたなりに原因を考えてみて、まとめましょう。
②エイダが育っていた環境を考えましょう。
エイダは虐待されて育ちました。内反足という「奇形」を持って生まれたのが原因です。
「奇形」を恥と考える母親はエイダを家から出させず、食事も満足に与えません。
母の偏見は、きっと教育が足りなかったことと、お金がないこと、
そして父親(相談相手)の不在などが原因だろうと、まとめましょう。
③スーザンのもとでエイダが心を開くまでの様子をまとめましょう。
「戦い」の結果、エイダはロンドンの母親の元をはなれ、
ケント州の村に疎開します。
村ではスーザンに引きとられ、スーザンは子供たちに必要と考えるものが与えられます。
服・下着・食事など、自分たちからしたら「当たり前」のものですが、
たくさんの「もの」を持ったことのないエイダにはなかなか受け入れられません。
理由は、自尊心(自分はここにいていいんだという安心感)が育っていないから。
防空壕ではロンドンで閉じ込められていた記憶がフラッシュバックし、パニックになります。
スーザンはパニックを起こすエイダを毛布でくるみ、抱きしめ続けます。
何度も抱きしめ続けられるうち、エイダは少しずつ落ち着いていき、
心を閉ざさずに過ごせるようになっていきます。
④子どもを育てるために大切なことを考えましょう。
ここで、
自分がどのように育てられてきたかを振り返ってみましょう。
家庭の状況は人それぞれですが、自分は愛情を受けて育ってきたでしょうか。
それとも大変な家庭環境でしたか?
ここは、あなた自身のエピソードで、読者を引き込めるといいですね。
そして、
エイダのように虐待されて育った子が、
心を開き、自分の人生を取り戻すまでには大変な時間と愛情が必要だ
と言うことを書いてまとめましょう。
⑤日本でも虐待がなくなっていない現実を踏まえ、自分にできることを考えましょう。
最初の段落で書いたように、日本にもまだまだ虐待された子どもたちはいます。
では、
虐待をなくすためにはどうしたらよいのかを考えて終わりましょう。
例えば、
子育てをする母親が孤立してしまわないように、周りが協力すること。
子どもが少々騒いでも、許容できる雰囲気を作ること。
きっと、母親に少しの余裕ができることで、
子育ての質は変わってくるでしょう。
あなたなら、将来何ができそうですか?
自分にできること、自分がどうなりたいかをまとめて、
読書感想文を仕上げましょう。
最後に
実際に虐待を受けて育った子は
きっとエイダのような「戦い」で外の世界に出ることは難しいです。
また、虐待は家庭内で行われることなので、
外からは見つけにくいです。
でも、この作品を読むことで
虐待はどんなものなのか、
虐待を受けた子供の心はどんなものなのか
を、きっと考えることができます。
知らなかったことを知れるという意味で、やはり読書は有用ですね!
ちなみに、もうすぐ、アメリカではこの作品の続編が出版されるそうです。
日本語訳が出るのが待ち遠しいですね!
おまけ
高校生の2018年の課題図書
も同じ時代を扱った作品です。
フィクションとノンフィクションの違いがありますが、
両方読むと
イギリスの状況、フランスの状況の違いを感じられますよ。
どちらも、一読に値する本です!
両方とも是非読んでみてください!