
この記事では、WISC(児童向けウェクスラー式発達検査)で
登場する数字の意味を解説しています。
うちの子、発達障害かしら・・・
と思って学校の先生や発達系のクリニックに行くと
多くの場合、知能検査をまず受けます。
現在、最もメジャーな知能検査はWISC(児童向けウェクスラー式発達検査)です。
その数字の意味を理解できれば、子供の特性がより分かるようになりますよ。
WISCでわかるIQについては
WISC検査のIQとは?何がわかる?学力との関係・高くても勉強できない?!の記事で解説しています。
WISCとは?
子どもの知能検査として現在のところ
最も使われる知能検査です。
対象年齢は6才から16歳です。
元々はアメリカのウェクスラーが開発した知能検査で
今の日本では4版が使われています。
アメリカでは第5版まで出ているので
間もなく日本版も出てくるでしょう。
検査項目としては
必ず行う10項目に、いくつかのオプションの項目を加えて
子どもの知能を測ります。
結果として出てくる数字の意味を以下にまとめていきます。
数字が意味するもの
ここでは、検査で登場する数字の意味を
一つ一つ、解説していきます。
FSIQ(全検査IQ・・・Full Scale IQ)
検査を受けた子のトータルとしてのIQ(知能指数)を意味します。
イメージとしては高校入試の内申書でたとえるなら
全教科の合計点を偏差値で表したようなものです。
偏差値は50が平均ですが、
WISCのFSIQは100を平均として考えます。
理論的な割合としては以下の通りです。
- 130以上・・・非常に高い(2.2%)
- 120から129・・・高い(6.7%)
- 110から119・・・平均の上(16.1%)
- 90から109・・・平均(50%)
- 80から89・・・平均の下(16.1%)
- 70から79・・・低い(6.7%)
- 69以下・・・非常に低い(2.2%)
FSIQが79以下だと、普通の学校での学習は
ほとんど理解できていないかもしれません。
そして、大体80から120の間であれば
いわゆる「普通の子」と見られることが多いのですが、
発達障害の子の多くはFSIQが普通でも
検査項目ごとのデコボコが激しいことが多いです。
受験科目で例えるなら
国語がバッチリでも体育が全く駄目とか、
検査項目によって得手不得手がはっきりしているということです。
ということで…
次は、検査項目について説明します。
VCI(言語理解指標・・・Verbal Comprehension Index)
VCIは、どれぐらい言葉を知っているか、使えるかを示す指標です。
言葉で考え、表現する力があるかどうか
が分かります。
PRI(知覚推理指標・・・Perceptual Reasoning Index)
PRIは、絵や図形を見て、どのように組み合わせるか、とか、次はこうなるはず、という力を示す指標です。
イメージで考えたり推理したりできる力があるかどうか
がわかります。
WMI(ワーキングメモリー指標・・・Working Memory Index)
WMIは、いわゆる短期記憶の力を示す指標です。
数字をどれくらい覚えられるか、頭の中で言葉を覚えて操作できるかがわかります。
指示をどれくらいまで覚えていられるかに通じていますね。
PSI(処理速度指標・・・Processing Speed Index)
PSIは処理速度、つまり単純な作業をどれだけ速くこなせるかを示す指標です。
見くらべて正しいかどうかをどれだけ素早く判断したり写したりできるか
がわかります。
GAI(一般知的能力指標・・・General Ability Index)
上の4つの指標を10の検査を用いて出す訳ですが、
いわゆる「知能」の部分を知るために表す指標も良く使われます。
GAI(一般知的能力指標)は、上で説明したVCI(言語理解指標)とPRI(知覚推理指標)から導き出される指標で、
いわゆる「知能」と呼ばれる部分を表す指標です。
「かしこい」とか「ひらめきがある」子どもは
GAIが高いことが多いです。
高校受験の内申点で例えるなら、
実技を抜いた主要5教科の部分になるかなと思います。
(あくまでもイメージでの話ですよ。)
発達障害の子の傾向と対応
4つの指標の特徴が分かった所で、
発達障害の子に見られる特徴をまとめていきます。
ただし、これはあくまでも一般論としてまとめるだけで、
すべてが当てはまるわけではないのでご注意ください。
ASD(自閉症スペクトラム)傾向
自閉傾向の強い子は
VCIとPRIが高く、WMIとPSIが低いケースが多いです。
「知識は豊富」だけれど「活用が苦手」「不器用」
という特徴が予想できます。
対応法ですが
自閉傾向の子には持っている知識をどう現実に活かしていくかという
SST(ソーシャル・スキルト・レーニング)が有効です。
ADHD傾向
ADHD傾向の強い子は、FSIQがそんなに低くないことが多いです。
ただ、早とちりだったり、自分勝手な解釈で回答したりということが考えられ、
下位検査を見るとデコボコが大きいことがあります。
きっと集中力のムラが結果に出ています。
こう言う子への対応法は、集中力を高めるトレーニングが有効です。
間違い探しなんかは、集中力を持続させるとても良いトレーニングになりますよ。
少しずつ、集中できる時間を延ばしていけるといいですね。
LD傾向
LDの子も、FSIQは低くないことが多いです。
WISCには、読み書きの力を測る項目はないからです。
ただ、WMI(ワーキングメモリー指標)が低く出ることがあるようです。
理由としては、頭の中に50音表がないからだと思われます。
LDの子にも色々な指導法が考えられますが、対応法としては
できる力を活かしながら、
今使えるテクノロジー(デジカメやワープロ入力など)を使ってフォローしていくのが有効でしょう。
最後に
WISCは、総合的なIQや発達の特性を測る検査で、
発達障害を見つけたり、診断したりする検査ではありません。
でも、傾向を感じることはできますし、
長所・短所を考えるヒントを考えられます。
子どもの傾向を知ることは
今後の指導への一歩となります。
検査の結果は冷静に受け止め、
子どもを伸ばすことを考えていきましょう!
チャンスがあれば、是非受けさせてみましょう!
WISCでわかるIQについては
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